2020.1.27

TPOに合わせてお花を楽しむ@gigi fleuriste 辻由美子さん

こどもの王国保育園の保育士である原田智広(ともくん)が、園周辺の地域に暮らす方々にインタビューを行っていく「こどもの王国 Local Stories」。

今回インタビューに伺ったのは、東日本橋一丁目に位置するお花屋さん、gigi fleuristeの辻由美子さんです。

園に飾るお花を買いに、子どもたちと日頃からお世話になっているお花屋さんですが、お店の前を通ると、まるで、何かの撮影スタジオかと見間違えるほど、大きな窓から美しくディスプレイされた色鮮やかなお花を見ることが出来ます。

もともとは、ファッション業界に身を置いていた辻さん(以下、敬称略)ですが、なぜ花屋に転身したのか?そして、店内の空間をあれだけ美しく彩ることのできるセンスの秘密や、そこに対する想いを伺いました。

ファッションとお花の共通点

原田:本日はよろしくお願い致します。まず、気になったのですが、お店の名前はなぜgigiなのですか

辻:フランスの女の子の名前をつけたかったんですよ。それで調べていたらgigiが出てきて、覚えやすいし、黒猫のジジを連想させるのでgigiにしました。

原田:フランスというところには何かこだわりがあるのですか?

辻:私が修行したのがパリスタイルのお花だったんです。

原田:お花にもスタイルがあるのですね。知りませんでした…。

辻:そうなんです。パリスタイル、ニューヨークスタイルとか色々ありますね。

ニューヨークスタイルだと、カラーとバラだけとか、作られた美しさを表現していて、パリスタイルはより自然に、ナチュラルに、という感じで、グリーンが多めで葉っぱをたくさん使います。

原田:InstagramやHPなどを拝見したのですが、元々ファッション業界にいらしたようですね。そこからなぜ花屋に転身しようと思ったのですか?

辻:30代半ばでお花を始めたのですが、どちらも根底が一緒だったんです。色使い、素材、質感、合わせ方が洋服と一緒なんですよ。習ったところの先生に、「お花の雑誌は見なくて良いからファッション雑誌を見なさい。」とも言われました。なので、共通するところがあって、違和感はなく、むしろ続きのような感覚ですね。洋服のディスプレイを考えているのとお花を組むのはとても似ていて、私はそれでアドレナリンが出るんです。

原田:なるほど。小さい時からそういう感覚ってありましたか?何かに集中してアドレナリンが出るみたいな感覚。

辻:ありましたね。絵を描いたり、工作をしたりは好きでした。

お花をTPOに合わせる文化へ

原田:HPにあった「TPOでファッションをコーディネートする感覚でお花を楽しみたい」は、そういったお花と洋服で共通するものがあったからなんですね。この言葉について、詳しく辻さんの想いを知りたいです。

辻:そうですね。例えば、ディナーとランチではまた着るものが違うじゃないですか。ファッション業界の人達の結婚式って、クラッチバッグ持ったりとか、サテンの靴を履いたりとか、みんなそこまで気を遣っていくんですよ。もちろん、それを楽しんでいるんですけどね。そこはお花も全く同じで、お見舞いの花と誕生日の花は違うから、時と場合と場所とあげる人をお花を作る時に意識はしています。

原田:お店では「こういう人にあげたいんです。」という話を聴きながらお花を作るんですか?

辻:オーダーの時は、細かくお花をあげたい相手の年齢とかまで聞いちゃいますね。

原田:そこからイメージを膨らませていくんですね。

辻:前もってご予約を頂いた方が仕入れの時から花材を揃えられるので、そうしてもらったほうがいいんですけど、日本だとまだまだ「花屋ってすぐ行って5分で作れるんでしょ。」というイメージがあるみたいですね。

原田:どちらかというと、そうやってこだわって花を作る文化になっていって欲しいんですね。

辻:そうです。もっと花の地位が上がって欲しいですね。

原田:日本だと先ほど言ったような「5分で作れるんでしょ?」と言ったような人が多い中で、お客さんはどのような方が多いですか?

辻:拘りたい人や珍しいものが欲しいという人が多いですね。あと、ありがたいことに、皆さんオーダーも「この雰囲気で!」と、イメージだけを伝えて任せて頂くことが多いですね。

原田:じゃあ、そういう風にこだわりたい人も確実にいるんですね。それこそ服と同じような気がしますね。ファストファッションでパパッと服を決めちゃう人と、本当にこだわって服を決める人と。

辻:そうですね。本当にそう思います。

子どもたちとお花との関わり

辻:子ども達にワークショップをしたこともあります。3歳から小学生くらいの子ども達にワークショップをしたんですけど、やっぱりあんまり「ああしなさい。こうしなさい。」って言わない方がいいんだなって思いましたね。笑

「これにお花達を好きに活けてね。」って言った方がやりますね。「次これ、次これ。」ってやってると、それに飽きちゃいますね。

原田:たしかに。作業みたいになっちゃいますよね。

辻:そうなんです。

原田:本当におっしゃる通りで、西池袋の園でも、近所のお花屋さんにワークショップをして頂いたことがあるんですが、その方も同じような考えを持って下さっていて、自由にやっていると本当に楽しんでやりますね。感触とか香りの違いをじっくり味わっているようでした。

辻:茎を切ったら、茎を切ることに夢中になりだした子がいて、別の方向に展開させていましたね。笑 それはそれでいいのかなって。笑

原田:僕なんかは恥ずかしながらお花に疎いので、子ども達の花との触れ合い方を見ていると、僕よりも断然多角的に花を楽しんでいるなと感じます。そう思うと、大人の思い描く作品だけをゴールにしてしまうと、その子ども達の豊かな触れ合いが窮屈になってしまう気がしますね。

原田:今後、お店としてこうしていきたいというようなビジョンはありますか?

辻:そうですね、最近思うのは、いいお花と普通のお花、買い付けの時に悩むんです。良いお花は当然高いです。でも、「みんな分からないから普通のお花でいいや。」という買い付けはやめようと思ったんです。頑張って良いお花にして、ちょっとでもみんなに伝わればいいなと思っています。

原田:なるほど。こだわりが感じられますね。

辻:お店を持つのは初めてなので、オープンしてから幅広いお客様に受け入れられたいと思っていると、やっぱり無難な、そこそこのお花がここに並んでしまったんですよね。

オープン当時は、「今までない花を見せたい。」と思っていたのに、ちょっと数ヶ月したら、私らしくない花が並んでしまったんですよね。周り人からもそれを言われて、「あ、これじゃダメだ。」と思って、やっぱり自分のこだわっているところは持ち続けなければいけないと思いましたね。それが少しづつ周りに伝わっていって、お客さんのお花を見る目が高まっていけばいいなと思っています。

原田:なんだか話を聞いて、今の保育業界も同じだなと思います。保育園も子どもを預ける方が増えてきて、保育の質、こだわりの部分が置いてきぼりになって、どんどん増設されている状態です。それを大人達のニーズだけに合わせて保育の内容を変えていくのは、危機感を感じますね。辻さんの花への姿勢を伺って、改めて、こどもの王国も子どもたちの育ちを優先して保育を考えていきたいなと感じます。

gigi fleuristeのHPはこちら

2019.12.25

クリーニング職人の世界@田中クリーニング|田中さん

こどもの王国保育園の保育士である原田智広(ともくん)が、園周辺の地域に暮らす方々にインタビューを行っていく「こどもの王国 Local Stories」。

今回インタビューに伺ったのは、西池袋2丁目にある田中クリーニングの田中さん。

西池袋園の子ども達が行く上り屋敷公園までのお散歩道にあるこのお店。お店の前を通ると、子どもたちが窓からクリーニングのお仕事を覗き見させて頂くこともしばしば。

子どもたちが覗き込んでいると、いつも優しい笑顔で子どもたちに手を振ってくださる田中さんご夫婦。クリーニング屋さんは昔から親しみのあるお店ではありますが、そこで長年働く田中さん(以下、敬称略)にとって、クリーニング屋とはどんなお仕事なのか、奥さんにその想いを伺いました。


クリーニング屋という仕事

原田:こちらのクリーニング屋さんはいつから始まったのですか?

田中:昭和の26〜7年から、洗濯板でクリーニングが始まりました。

原田:今のクリーニング屋さんて、一般家庭には絶対ない機械があるじゃないですか。だから商売が成り立つのはよくわかるんですが、洗濯板はどの家庭にもあったかと思います。それでクリーニング屋として商売ができるっていうのは何故なんですか?

田中:同じ洗濯板であっても、洗う技術は持ってるプロでしたからね。自分の腕一つで商売をしていますから、職人さんの中でもクリーニング屋さんっていうのはすごいプライドが高いです。クリーニングはその人の腕によって綺麗にアイロンをかけられるか、やっぱり腕なんです。

原田:恥ずかしながらその世界を知りませんでした。クリーニング屋さんて専門的な機械とか洗剤が違うだけなのかなって思ってました。

以前、お豆腐屋さんに、商店街のお店が時代と共に続々となくなってしまったという話を聞きました。その中でもお豆腐屋さんは、仕入れずに自分のお店で商品を作っている点、つまりここにしかないものが売っているということが、お肉屋さんや魚屋さんなど潰れてしまったお店とは違う点だと。そして今回話を聞いて、このクリーニング屋さんも戦前からという長い間続いているところで、この店ならではの技術を売りにしているという点が共通している気がします。


田中:結局はクリーニング屋でも大手でやってるところはほとんど機械ですよね。ですから、職人さんの技術っていうのは活かされないです。うちの主人はとにかく潔癖症なんですよ。

原田:クリーニング屋さんにぴったりですね。笑

田中:シミがあるままお客さんに渡すのがどうしても許せない。自分ではどうにもならないとなると、染抜き専門のところに頼みます。素材によって専門があるんですよ。溶剤とか工程も違うんです。

ですから着物なんかもね、洗えないこともないし、仕上げもできるんですが、染抜きってことになると、下手に溶剤使うとそれがシミになっちゃうんです。今お預かりしている着物もシミだらけでしたけど、綺麗になって戻ってきました。専門の職人さんに頼むと本当に新品になって返って来ますよ。


職人としてのこだわり

原田:クリーニング屋さんも結構奥が深いんですね。

田中:本当に今日明日できるっていう仕事ではないですね。ワイシャツのアイロンかけ方、畳み方にも工程があるんです。工程が違うとシワができちゃうんですね。

原田:細かい仕事なんですね。

田中:朝、会社に行く時に、ワイシャツのボタンが取れてたらそのワイシャツは着れないので、最低ボタンがほつれがないか主人がチェックするので、私がボタンつけたり、ほつれを直したりします。開けてそのワイシャツが着れないとがっかりしますよね。

綻びとかやってない方もいらっしゃいますから。だから最低ご主人様が朝ワイシャツを着てくとかズボンを履いて行くときにボタンがない、ほつれてるってのは直してあげるようにしています、

原田:思いやりですね。

田中:そこまでが最低のサービスだと思ってます。

原田:こっちからすると期待以上のサービスが受けられる気分ですね。綺麗になればいいのにボタンまで。

田中:主人も私もプライドを持ってこの仕事をしています。
人に売ったりするお店なんかはまた違ったものがあるでしょうけど、汚れたものを扱って、綺麗にして返さなきゃいけないってのがありますから神経使います。

原田:嫁入りでこちらにいらっしゃったと伺いましたが、クリーニング屋さんに来るにあたって何か思ったことはありますか?

田中:私が嫁入りする時、主人がクリーニングの店は手伝わなくていいってことだったんです。料理さえ作ってくれればいいってことだったので、私もそう思っていたんです。ところが、仕事が多くてやりきれない時、職人さんがいない日はアイロンが空いてたので、「よし、じゃあやってみるか」って。笑 そしたら父がそんなの覚えたら一生やらなきゃいけないぞ、覚えなくていいんだよって言うんです。私ね、気が強いので、「いえ、絶対やる!男に出来て女に出来ないわけない!」って。笑

すると、父に「仕上げ上手くなったな。でもそれで仕事のあてにされちゃうぞ。」って言われましたが、でもゆくゆくは、おじいちゃんとおばあちゃんがいなくなったら私たちがやらなきゃいけないんだし、早かれ遅かれやらなきゃいけないから仕事覚えられてよかったって。いつまでも父が生きてるわけでもないし。86歳で亡くなりましたが、85歳くらいまでは仕事してました。仕事がなくなったらゴミ出しだとか、掃除とか綺麗好きな人でしたので。頑固なおじいちゃんで仕事に関しては厳しかったですけど、日常は布袋様みたい顔でした。温和な顔でね。

原田:お父様も素敵な職人さんだったのですね。そこまで真剣になれるクリーニングという仕事のやりがいはなんなのでしょう?

田中:もともと、主人の兄がここをつぐ予定だったんです。でもどうも俺は性分に合わないと。俺はサラリーマンになるって公務員になりました。主人はその時にもう大学決まっていたのに、それを断念して「俺が継ぐ。」って。「俺にはこの仕事しかできないから。」って主人は言いますね。

原田:責任感の強い方ですね。

田中:アイロンかけて手を動かさなきゃ仕事にならないわけですから。預かったらお客さんが了解しなきゃお金にならないわけですからね。ぼーっとしてらんないですよね。


田中さんの子どもへの思い

原田:話は変わりますが、僕たちがお散歩している時に、すごく優しく微笑んで手を振ってくださるじゃないですか。子ども達にとても優しいイメージがあるのですが、田中さん自身の子育てで大切にされてたことはありましたか?

田中:自分が忙しくしてまして、子どもを公園に連れて遊びに連れてったって記憶がまるでないんですよ。日曜日におやすみじゃなかったんです。1年中お店空いてましたから。朝7時に開けて、夜9時まで営業していました。

長女が小学校2〜3年の時かな、「お母さん、日曜日によそはどこかに遊びに行くよ。」と。「うちはどうして連れてってくれないの?」って。そこで、「日曜日を休みにしよう。」と、主人と主人の父に言ったら、最初は反対だったんです。お客様に不自由かけるから休まないって言われたんですけど。でも、主人が頑張ってくれて、「子ども達をいろんなところに連れてってあげたいから、1週間に一回休みにしようよ。」って説得してくれました。

原田:結果的に日曜日を休みにして、家族や子ども達に変化はありましたか?

田中:いざ休みにすると、反対してた父も母も日曜日が待ち遠しかったみたいです。色んなところに連れて行きました。「次はどこ行く?」って。笑

原田:娘さんの声を受け止めた素敵な変化ですね。

田中:なので、自分のこどもがいた時は忙しくて、孫が出来て初めて子どもの可愛さに気づきました。だからうちの孫も2歳半で保育園に行ってるので、もうお散歩で会うこども達は同じですよ!自分の孫のようで。もうね、本当に抱っこしたいんですけど、そうすると怪しいおばさんになるので。笑 可愛いですよね。

お散歩で見かけると、「この子達も、ちゃんと育ってほしいな。」って思いながら見てます。だから必然的に笑顔になりますね。可愛い顔してバイバイしてくれると、嬉しくなっちゃいます。

原田:その気持ちは子ども達にも伝わっていると思います。いつもありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願い致します!