2019.11.11

花育を通して日常に花のある生活を@flowershop315長谷さん

こどもの王国保育園の保育士である原田智広(ともくん)が、園周辺の地域に暮らす方々にインタビューを行っていく「こどもの王国 Local Stories」。

今回インタビューに伺ったのは、西池袋通り沿いに面するflowershop315の長谷幸子さん。

こどもの王国保育園西池袋園では、季節の花を使ったワークショップをして頂いたり、園に飾る花をお店に買いに行かせて頂いたりと、とてもお世話になっています。

こども達とお店に伺うと、子ども達へのあたたかい眼差しと言葉で、保育者も子ども達もリラックスして花と触れ合うことが出来ました。

長谷さんは西池袋園でも行って頂いているように、花を使ったワークショップを行なっています。そこに対する想いを伺いました。

flowershop315が出来るまで

原田智広(以下、原田):それでは、今日はインタビューよろしくお願いします。そもそも、お店の315って数字には何か意味があるのですか?

長谷幸子(以下、長谷):名前がサチコなので。花屋って地域の人には「花屋さん」としか覚えられないだろうなって。だからどんな名前つけても一緒だろうと。笑 だったら「なんで?」って聞かれる方がいいかなと。

原田:確かに。つい聞いてしまいました。笑 長谷さんはずっとお花屋さんとして働いていたのですか?

長谷:海外にいた時期もあるんですが、その中で台湾にいた時は、日本語教師のお手伝いもしていました。今のお店をやる前は押し花の仕事もしてたりとか。でも花関係ですねほとんど。でも、日本語教師もしてたから、教える楽しさみたいなのはそこで感じて、ワークショップに繋がっているところはあるかもしれません。

原田:海外にいた時から花屋にはなろうと思っていたんですか?

長谷:台湾で日本語教師もやってたんですが、花も好きだったので離れたくなくて。台湾の花屋で働かせてくださいって言ってたところが、海外でも日本でも有名なフラワーデザイナーさんだったんですよ!!笑

日本語教師の合間に台北行って、デザイナーさんのアシスタントして。みたいなことずっとやってましたね。

原田:当時は花屋というより、デザイナーの仕事だったんですか?

長谷:デザイナーさんのアシスタントもしながら店舗も見てたんですよ。そこで接客してるのを見て「いいなー」と思って。地元の人とフランクに喋って、自分も日本にいた時は同じことやってたなって。中国語は日常会話程度は喋れるけど、もっと深く心に届くようなことは言えなかったんですよね。

原田:僕も海外にいた時に同じようなことを思いました。

長谷:これは帰って母国語で花屋をやりたいと。それが27〜8歳の時ですね。

原田:海外に行ったことでの気づきなどはありましたか?

長谷:台湾で「あ、やばい!」って思ったのは、例えば、中学卒業して蕎麦屋を修行してる子がいるとするじゃないですか。その子からから考えたら、私30近かったから、もう15年くらいは差が出ててるわけですよ。だったら長くちゃんと経験積もうと思って、思い直して帰って来ました。

やっぱり、コツコツやって来た人が一番の近道だっていうのに気づいたというか。その花との関わり方も、若い頃は、お洒落なデザイナーさんが良くて、花屋はやだとか思ってたんですが、最終的にはコミュニケーションがとりたい花屋がやりたいんだと思って。そこに気づいた時点からは楽しかったですよね。

原田:自分のやりたいことを見つけた瞬間だったのですね。

長谷:日本に帰って来てからは東池袋の花屋で働いてたんですよ。あの地域っておじいちゃんおばあちゃんがいっぱいだったんです。そしたらやりたいこと全部詰まってるじゃないですか。でも、そこがセルフの花屋になってしまったので、それから知り合いのところで押し花の仕事して、お金貯めて花屋の準備しようって。

原田:コミュニケーションがとりたいと言っても、その手段として別の職業も考えられると思うのですが、そこで花屋を選んだ長谷さんにとって、花の魅力とはなんなのでしょうか?

長谷:花自体は好きだと思うんですが、私は花の色とか変化が好きですね。種類として「この花が好き!」っていうのは多分お客さんお方が優ってると思いますよ。

原田:お客さんの方がですか?それは意外な答えです…

長谷:だから、お客さんにも「これは成長してこうなっていきますよ。」とか、そういうことを伝えるのが好きです。この間、「長谷さんは八百屋さんとか肉屋さんみたいですね。」みたいなこと言われました。お花を提供するときに「長く保つためにこれが特!」みたいなことをいうから。自分で納得しちゃいました。笑 

原田:わかりやすい表現ですね。笑

長谷:こうしたらオシャレに見えるよってことはやるけど、なるべく長く楽しめるっていう提供の仕方が好きですね。


原田:花とお客さんを大切にされているんですね。

長谷:私がここで花屋をやってるのも、地域に「○○屋さん」っていうのがあれば直接関われるじゃないですか。私はネットはインスタとフェイスブックしかやっていないんですが、その発信も地域の人が「今は、これをやってるんだ。じゃあ行こうかな。」みたいな感じで来てくれるっていうのが一番理想だなと思って。全国とかじゃなくて、自分の身の丈にあった範囲で。


なぜ、子ども達に花を使ったワークショップをするのか?

原田:もともとワークショップには補助金が出ていたそうですが、どのような仕組みだったのでしょうか?

長谷:もともとは花市場からお話を頂いて、都から補助金をもらって地域の花屋さんが子ども達に教えに行くっていうシステムだったんですよ。

原田:しかし、補助金がなくなってしまった今、ワークショップを続けるのは大変じゃないですか?

長谷:補助金が出ないのはマイナスですが、それをやってる自分がすごい楽しかったんですよ。

それと、花業界が下がってきているっていうのは聞いていたし、実感もしています。でも、それは花に触れ合う機会がないからだと思うんです。花屋さんがなくなり、スーパーでしか買わないじゃないですか。

原田:確かに、今はお花屋さんに馴染みのない人は多いかもしれません。

長谷:でも、やっぱり人とのふれあいの中で買い物をして楽しさが出てくるんだと思うんです。だったら、小さい頃から花に触れてもらって、そのワークショップの体験が楽しいだけじゃなくて、そこで出来た作品をお家に持って帰ったら、次はお父さんとお母さんが花と繋がりますよね。

家の中に花がある生活が1週間や2週間楽しんだ結果どうだったのか、それを味わってもらいたいんです。10人いて、たった1人でも「じゃあ、また花を買ってみよう。」って、私のお店じゃなくても、別のお店で買ってくれれば結果オーライじゃないですか。そこに繋がっていけばいいなと思ってスタートしたのもありますね。

今はボランティア状態なので、花屋としてはマイナスになってるかもしれません。だけど、区が積極的に同様の花育支援をサポートして、ワークショップを受ける側も、そんなに負担にならない金額で楽しければ、お互いに良い関係が築けてずっと続けられるのかなと思います。

そうすると、長い目で見ると花のある生活っていうのが少しずつ増えていくのかなって。小さい子って行ったところをよく覚えているから、花屋の前を通った時に「あ!ここ来た!」とかね。そしたらお母さんも「あ、来たの?」って。そうなると花屋に入る敷居が低くなると思うんです。

ワークショップで大切にしていること

原田:ワークショップで大切にしていることってありますか?

長谷:子ども達が楽しんでて、なおかつ、子どもの作品を持って帰ってきたらお母さんは捨てられないですよね。笑 

うちも息子がいますが、一人っ子だから特に大切になっちゃうわけですよ。そしたらその作品は飾るじゃないですか。そこにメッセージとか子どもが書いた似顔絵とか。5歳くらいだと字が書けたりもするので。そこをミックスさせて一個添えてあげると、またその家庭にとっての価値が上がりますよね。

原田:長谷さんは、子ども達に対しての眼差しが本当に暖かいですよね。園の子ども達と伺う時も、本当に安心してお店で過ごせます。

長谷:なかなか園児さんと関われる機会ってないですよね。だから、お店に子どもが来ても「どうぞどうぞ入って入って!」みたいな。店の中が子どもでいっぱいになっちゃっても私は全然嬉しいです。笑

原田:花育への想いはすごい熱い上で、「絶対お花好きにさせたい!」みたいな押し付け感がないことも、子どもたちと安心してこのお店に関われる理由の1つだなと、今日お話しをして改めて感じました。

長谷:子どもがみんな花屋になりたいわけじゃないですからね。花育と言っても、そのたった一回で何か吸収できるかって言ったらそうではないと思います。

各ご家庭で1輪でも花を飾り、それがいつでも当たり前の環境で、日常化されてこそ1番の花育です。その中で育ってきた子がどのような影響かは、結果は将来はっきりと見えてくると思います。

原田:今日はありがとうございました!これからもどうぞよろしくお願いします!